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矢状面の着地方法の変化は脛骨に対する大腿脛骨関節間力と地面反力の大きさと方向を変える

2018.09.30 | 著者:

第3回目の今回は、JATO理事である下河内洋平(大阪体育大学)先生が行われた研究をご紹介いただきました。


ぜひ、ご一読ください。


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Shimokochi, Y., Ambegaonkar JP, Meyer, EG., (2016). "Changing Sagittal-Plane Landing Styles to Modulate Impact and Tibiofemoral Force Magnitude and Directions Relative to the Tibia." J Athl Train51(9): 669-681.


「矢状面の着地方法の変化は脛骨に対する大腿脛骨関節間力と地面反力の大きさと方向を変える」


この論文は、被験者20名(男性10名、女性10名)に3つの異なる方法で台上からドロップ片脚着地を行ってもらい、大腿脛骨関節間力の脛骨長軸方向成分が最大になった時の地面反力(衝撃)と大腿脛骨関節間力の大きさと脛骨に対する方向を検証し、ACL損傷メカニズムとその予防の観点から考察を行った研究です。被験者は自分たちの好みのスタイルでの着地方法(SSL)、前重心でつま先から着地をするスタイル(LFL)、上体を起こして後ろ重心で踵から着地をするスタイル(URL)の3つのスタイルでドロップ片脚着地を行いました。三次元動作解析の結果、URLにおいては、最も大きな地面からの衝撃と最大脛骨大腿骨間力(どちらも体重の5倍以上の力)が最も早期(接地から0.037秒)に生じる結果となった。さらに、この接地から最大脛骨大腿骨間力が生じるまでの時間は膝を屈曲させる時間としては極端に短いため、結果として脛骨が前方にほとんど倒れず、地面反力が脛骨よりも前方に働くため、脛骨前方剪断力(体重の0.5倍)が最も生じやすい状態となった。しかし、LFLにおいては、地面からの衝撃が起きるまでの時間が最も長く(0.067秒)、その分膝を屈曲させる時間ができ、結果として脛骨の前方への傾きが大きくなるため、地面反力が脛骨を後方に押す方向で働き、逆に僅かな脛骨後方剪断力(体重0.1倍)が生じない結果となった。また、LFLでは地面からの衝撃も最大脛骨大腿骨間力の大きさ(どちらも体重の3.6倍程度)も最も小さい結果となった。


さらに、近年の死体による研究から、脛骨プラトーの後方傾斜が脛骨大腿骨間力の長軸成分を脛骨前方剪断力に変換させ、ACL損傷リスクを高めると考えられている。このことから、今回の実験データを使い、脛骨プラトーに15°の後方傾斜が存在すると仮定してURLのデータを計算しなおすと、脛骨プラトー後方傾斜が無い状態では体重の0.5倍程度だった前方剪断力が、15°の脛骨プラトー後方傾斜の存在により体重の1.75倍に増大する結果となった。この結果は、脛骨プラトーに大きな後方傾斜が存在するアスリートが、後ろ重心でしかも足関節で衝撃を吸収しない形で着地をすると、脛骨前方剪断力を著しく増大させ、結果としてACL損傷リスクも著しく高めてしまうことを示唆している。逆に、前重心で最大の衝撃を受けるときに膝が十分に曲がった状態にし、脛骨を前方に傾けた状態で衝撃を受け止めるような着地を行えば、ACL損傷リスクは軽減できることを示している。


JATO研究・教育委員会 下河内洋平