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Serratus anterior and Upper Trapezius Electromyographic Analysis of the Push-Up Plus Exercise: A Systematic Review and Meta-Analysis

2019.10.31 | 著者:

Serratus anterior and Upper Trapezius Electromyographic Analysis of the Push-Up Plus Exercise: A Systematic Review and Meta-Analysis


 


概要


プッシュアッププラス(PUP)エクササイズ時の筋活動を分析した先行研究を系統的レビューおよびメタ分析により検証した結果、手の距離、肩関節/肘関節の屈曲角度および下肢の位置によって、PUPエクササイズ時の前鋸筋および僧帽筋上部線維の筋活動が影響を受けることが明らかとなった。


内容


背景:肩甲骨運動時には、前鋸筋と僧帽筋上部線維のフォースカップル作用が生じる。しかし、肩の機能障害を有するオーバーヘッド・スポーツのアスリートにおいては、しばしば前鋸筋の機能低下と僧帽筋上部線維の過剰な収縮が観察される。そのため研究者らは、機能低下がみられる前鋸筋の筋活動を高め、僧帽筋上部線維の筋活動を最小限に抑えるエクササイズの探索に取り組んでいる。PUPエクササイズは、前鋸筋を強化するエクササイズとして広く用いられているが、様々な条件で実施した場合、前鋸筋および僧帽筋上部線維の 筋活動が受ける影響については明らかではない。


研究目的: 前鋸筋と僧帽筋上部線維の筋電図(EMG)データに基づいて、様々なバリエーションのPUPエクササイズの有効性を比較すること


方法:2000年1月1日から2008年3月31日までの期間に報告された、PUPエクササイズのEMG分析研究を、PubMedとScopusの2つの検索エンジンを用いて体系的に検索した。


また、メタ分析のために前鋸筋および僧帽筋上部線維のEMGデータにおける平均差の95%信頼区間を算出した。


結果:分析基準に適合した19の研究を検証した結果、安定した平面上で、手の位置は肩幅をとり、肩関節は屈曲110度から120度に位置させ、さらに片側の下肢を挙上し、肘関節完全伸展位からPUPエクササイズを行った条件において、前鋸筋は賦活化し、僧帽筋上部線維の活動は抑制されることが示された。また、不安定な平面上で実施した場合、僧帽筋上部線維の筋活動が2.74%増加したことも示された。


結論:通常のPUPエクササイズにおいても、前鋸筋の筋活動は高まる。 さらに、安定した平面で、両手を肩幅、肩の屈曲角度を110度または120度とし、片側の下肢を挙上、さらに肘を完全に伸ばした状態で実施した場合、前鋸筋活動は増大し、僧帽筋上部線維の筋活動は低下する。


臨床現場への応用


結果で示された条件でのPUPエクササイズは、前鋸筋を賦活化し、僧帽筋上部線維の筋活動を抑制する。(したがって、肩の機能障害を有するオーバーヘッドアスリートに対するリハビリテーションエクササイズとして有効であると考えられる)。また、エクササイズが、僧帽筋上部線維の筋活動を抑制しながら前鋸筋を強化することが目的である場合、PUPエクササイズは不安定な環境上ではなく、安定した平面上で実施すべきである。


Reported by  越田 専太郎(了徳寺大学)


【参考文献】


Serratus anterior and Upper Trapezius Electromyographic Analysis of the Push-Up Plus Exercise: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Athletic Training. 2019; 54(11):000–000 doi: 10.4085/1062-6050-237-18