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アスレティックトレーニングと公衆衛生

2018.12.03 | 著者:

第5回目となります今回は、中新井田敦子先生(JATO理事)に研究をご紹介いただきました。ぜひ、ご一読ください。


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タイトル: Athletic Training and Public Health Summit

(アスレティックトレーニングと公衆衛生)

 

出典:Mark Hoffman, PhD, ATC, FNATA et al; Journal of Athletic Training 2016;51(7):576–580

http://natajournals.org/doi/pdf/10.4085/1062-6050-51.6.01

 

Objective: ATが公衆衛生学のプロフェッショナルと手を組み、人口ベースでケガや疾病予防の可能性をアプローチする利点に積極的に取り組む。

Background: ATはケガや疾病に対して主要な役割を演じている。しかし人口レベルの見地から方針の策定、評価、実践へと繋げられていない。「アスレティックトレーニングと公衆衛生サミット」はこれらの職業の共通点を理解・調査するために開催された

Conclusions: 公衆衛生の領域にATが統合するには、われわれがプロとして、個人だけでなく人口レベルでの焦点に合わせなくてはならない

Key Words: population health, injury prevention, policy development, policy evaluation

 

はじめに、長年ATの証として選手の傷害疾病予防を努めてきた。

これらの経験を公衆衛生的なアプローチがとれないかと数々の会議が開かれた。そこで2015年8月にオレゴン州でAthletic Training and Public Health Summit (ATPHS)が開催された。

公衆衛生とは“健康と暮らしの促進、疾病や傷害の予防、感染症の検出と管理を通じて家族や地域社会の健康を保護し改善する科学である’’ CDC&Prevention Foundation より

公衆衛生が健康に関する問題の取り組み方;Finch C 2006より

(1)  Describe the magnitude of the problem (incidence and burden),

(2)  Identify risk factors and mechanisms,

(3)  Develop interventions for the risk factors identified

(4)  Assess the efficacy and effectiveness of the intervention in reducing the incidence and burden of the problem.

(5)  Describe the intervention context in order to understand what can actually be implemented in real-world settings

(6)  Implement and evaluate the effectiveness of efficacious interventions

 

これらの規則は、脳振盪、ACL損傷と女性、突然の心臓死などATが対処している問題と方法が類似している。また公衆衛生で述べられている、一次予防、二次予防、三次予防などは、neuromuscular training programs to prevent knee injuries、early treatment, slowing of disease、knee or ankle OAなどすでにATが取り組んでいる同系の対策である。ATはスポーツにおけるケガや感染症などの疾病に対して、競技のルール改正や競技上使用する防具を改善するなど対策を打っている。すでにATは, 公衆衛生が行っている健康に対しての政策作りに取り組んでおりその対象者を競技者ではなく人口へと広げATの知識や経験を公民に役立てること可能である。

 

ATPHSで述べられた学習目標は;

  1. Describe the benefits of using a population-based approach to address concerns important to ATs,

  2. Identify specific skill sets and potential partnerships that would be beneficial for maximizing the prevention of injuries and illnesses commonly treated by ATs,

  3. Identify and develop potential solutions to challenges that arise in the development, translation, adoption, and assessment of preventive policies, guidelines, and practices.


 

ATPHS の座長であるMark Hoffman, PhD, ATC, FNATAにより、

NATAとして前進するためには;

Ÿ   The Athletic Training Strategic Alliance, consisting of the Board of Certification, the Commission on Accreditation of Athletic Training Education, the NATA, and the NATA Research & Education Foundationは関わるべき


Ÿ   教育機関は重要な役目があり、ATと公衆衛生学を繋げるために能力を発揮し、大学、学部単位で連携をとることを検討する


Ÿ   APHA(全米公衆衛生協会;American Public Health Association)などと強いパートナーシップを組み、ATが公衆衛生に興味を持つことで州単位での活動に協力する


Ÿ   保険会社や企業などとコーディネートし、ATのケガや疾病予防がリスクマネジメントに役立つように働きかける


 

公衆衛生の視点からATのスキル、知識、能力が役立つためには;

Ÿ   ATは公民にATの役割を教育すべきである


Ÿ   ATも公民の健康格差に気づき政策策定に貢献すべき


Ÿ   ATは職場や教育機関のリスクマネジメント担当と協力し選手以外の安全対策に貢献すべき


Ÿ   スクリーニングや緊急時の行動計画、衛生面での配慮はATの日常的な活動である。その強みを学会等でアピールすることを薦める。


Ÿ   教育プログラムで統合する、お互いの強みを生かす。助成金を協力して獲得する。


 

ATがリードできる分野は何か;

骨変形症、特に外傷後の慢性的なOA、脳振盪のマネジメントや競技復帰に向けての対策、突然の心臓死のスクリーニング、熱中症予防、障害の予防対策、疾病・傷害の予防対策、緊急行動計画の作成や災害救助活動などに強力な貢献ができる。

 

まとめ

ATが通常行っている業務は公衆衛生に強く関連があり、それを認識すべきである。

我々は公衆衛生を学ぶだけでなく、ATが今までの個人の健康と幸福にフォーカスあてていたところ、対象者を広げてすべての活動的な人々へと転換することによりATを公衆衛生的な医療従事者職へのアピールする重要なチャンスとなる。