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【Season2 vol.6】急性足関節内反捻挫受傷後におけるスポーツ復帰の判断:PAASSフレームワークの紹介−国際的・学際的コンセンサス

2021.09.20 | 著者:
足関節内反捻挫は、スポーツにて頻発するケガであるが故に、軽視される傾向があります。しかしながら、自己判断による無理な競技復帰は、捻挫の再発、慢性的な足関節の痛みや不安定感といった後遺症を誘発しやすく、また、将来的に足関節OA(変形性関節症)になるリスクを高めるとされています。これらを防ぐ(または軽減させる)ためにも、スポーツ復帰には、専門家による適切な評価と判断が望まれます。

目的
本研究では急性足関節内反捻挫受傷後のスポーツ復帰の判断に関する評価項目リストを作成し、PAASSフレームワークを紹介した。

方法
専門家の知見を系統的に集約する調査手法(デルファイ調査アプローチ)を用いて、フィールドまたはコートスポーツにおけるトップレベルのアスリートのケアを行う155人の国際的かつ多様な医療従事者(理学療法士、アスレティックトレーナー/セラピスト、スポーツドクターなど)によるコンセンサスを作成した。

結果
急性足関節内反捻挫受傷後のスポーツ復帰への判断に関する35の評価アイテム中、16アイテムが70%以上のコンセンサスを得た。これらの16アイテムは、Pain severity(痛みの程度) 、Ankle impairments(足関節の機能障害)、Athlete perception (選手の主観的感覚)、Sensorimotor control(感覚運動制御) 、Sport/functional performance(スポーツ/機能的パフォーマンス)の5つの領域(PAASS)に分類された。

画像1

図1. PAASSフレームワークの概略図(Smith et al.,に基づき, 著者が作成).

結論
急性足関節内反捻挫受傷後のスポーツ復帰への判断には、専門家による痛みの程度、足関節の機能障害、選手の主観的感覚、感覚運動制御、スポーツ/機能的パフォーマンスの評価が含まれるべきである。

近年、足関節内反捻挫に関する研究は数多く発表されており、スポーツ現場や医療現場での対応も日々進歩しています。足関節内反捻挫を「たかが捻挫」と甘く見ることなく、アスレティックトレーナーや医療従事者のケアを受けることはとても重要であると言えます。

出典
Smith et al., Return to sport decisions after an acute lateral ankle sprain injury: introducing the PAASS framework-an international multidisciplinary consensus. Br J Sports Med. 2021 Jun 22.

文責
篠原 純司