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【Season2 vol.2】大学女子選手の前十字靭帯損傷予防トレーニングプログラムに対する認知度

2021.05.20 | 著者:
前十字靭帯(以下、ACL)傷害予防トレーニングプログラム(以下、予防トレーニング)は、ACL損傷の減少に効果的であると報告されています。しかしながら、予防トレーニングがどの程度普及しているのかは明らかになっていません。本研究では、大学女子選手を対象とし、予防トレーニングの認知度と実施要件について検討しています。目的
大学女子選手の予防トレーニングの参加経験、認知度、参加要因、そしてACL損傷に関する知識に関して評価すること
方法
予防トレーニング関する12個の質問項目を作成し、アンケート調査を行った
結果
19の異なる州に所属する31大学の440名の大学女子選手から回答を得た
・ 女性のACL損傷リスクは男性より高いことを知っている:85%(n=373)
・ ACL損傷は予防可能であることを知っている:89%(n=391)
・ 予防トレーニングのコンセプトを理解している:33%(n=143)
・ 予防トレーニングを実施した経験がある:15%(n=64)
・ 予防トレーニングにACL損傷予防効果があるのであれば、予防トレーニングを毎日実施したいと感じている:89%(n=391)
・ ACL損傷リクスの高いスポーツ(バスケットボール、バレーボール、ソフトボール、フィールドホッケー、ラクロス、サッカー、スカッシュ、テニス、ラグビー、チアリーディング、ダンス、トランポリン)に所属している大学女子選手ほど、予防トレーニングのコンセプトを理解している
・ ACL損傷リクスの高いスポーツに所属している大学女子選手ほど、予防トレーニングを実施した経験がある
・ ACL損傷者、もしくは、チームメイトにACL損傷者がいる大学女子選手ほど、予防トレーニングのコンセプトを理解している:オッズ比:ACL損傷者=3.5、チームメイト=4.6
・ ACL損傷者、もしくは、チームメイトにACL損傷者がいる大学女子選手ほど、予防トレーニングの実施に興味を示している:オッズ比:ALC損傷者=2.3、チームメイト=3.4
結論
89%の大学女子選手は予防トレーニングに興味があるにもかかわらず、たった15%の選手のみその実施経験があることが明らかになった。また、予防トレーニングのコンセプトを理解している大学女子選手はたった33%であった。本研究の結果から、予防トレーニングは大学女子選手に広く普及していないことが明らかになった。ACL損傷リクスの高い対象者に対する、予防トレーンングの効果的な実施方法を検討する必要がある。

本研究結果の最も大きな発見は、BOC-ATCがチームに帯同しているアメリカの大学ですら、予防トレーニングの実施経験がある大学女子選手はたった15%しかいないということです。アメリカと比較し、チーム専任のアスレティックトレーナーが少ない日本では、どのような数値が確認されるのかとても興味があります。また、ACL損傷発生率は2000年代前半から減少していないと言われています。その要因の一つを本研究が示したのではないでしょうか。結論でも述べられていますが、現場で指導しているアスレティックトレーナーのACL損傷予防に関する教育・実施率向上を後押しする、新たなシステム構築が必要だと考えられます。

出典:Tanaka MJ, Jones, LC, Forman JM. Awareness of Anterior Cruciate Ligament Injury-Preventive Training Programs among Female Collegiate Athletes. J Athl Train. 2020; 55(4): 359-364

文責:鈴木秀知