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Hip Muscle Strength Predicts Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injury in Male and Female Athletes: A Prospective Study

2018.12.31 | 著者:

第6回目となります今回は、非接触型ACL損傷リスク関連の研究を鈴木秀知先生(新潟経営大学)にご紹介いただきました。ぜひ、ご一読ください。


Hip Muscle Strength Predicts Noncontact Anterior Cruciate Ligament Injury in Male and Female Athletes: A Prospective Study


Khyayambashi K, Ghoddosi N, Straub RK, Powers CM


 非接触型前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament: ACL)損傷者のシーズン開始前の股関節外転・外旋筋群の筋力は、非損傷者のそれと比較し虚弱であることが報告されています。それらの筋力値が非接触型ACL損傷の予測因子として有効であると期待されていますが、詳細な値については明らかになっていませんでした。今回のJATOアカデミック・アップデートでは、将来の非接触型ACL損傷リスクが向上する股関節外転・外旋筋群の筋力カットオフ値を提示した前向き研究をご紹介いたします。


 この研究では、フットサル、サッカー、バレーボール、バスケットボール、ハンドボール競技に参加している468名の競技スポーツ選手(女性135名、男性333名)を対象としております。シーズン開始前に、徒手筋力計を用いて股関節外転・外旋筋群の最大等尺性筋力を測定し、その値を選手の自体重で除した数値をベースライとし、シーズン中に非接触型ACL損傷を発症した対象者とそれ以外の対象者との比較を行っております。


 シーズン中に、非接触型ACL損傷を発症した男子は9名、女子は6名であり、統計の結果、性別に関係なく、非接触型ACL損傷のリスクが向上する筋力カットオフ値は、股関節外転筋群では、体重の35.4%以下の筋力、股関節外旋筋群では、体重の20.3%以下の筋力であるとこの論文では報告しております。また、股関節外転筋群の感度は87%、特異度は65%に対し、股関節外旋筋群のそれらは、93%、59%であったと報告しております。


この研究の結果、カットオフ値以下の股関節外転・外旋筋群の筋力を保持している選手は、将来の非接触型ACL損傷リスクが向上する可能性があることが明らかになりました。また、この研究の特徴的な点は、女子選手のみだけではなく男子選手にも同様な結果を示した点であります。この研究の著者は、股関節周囲筋の筋力評価は、将来の非接触型ACL損傷リスクの高い選手の抽出において有益な評価方法の一つになると報告しております。


 股関節周囲筋筋力と非接触型ACL損傷との関係については、いまだ一定の知見は得られておりません。また、この研究に対する問題点もいくつか報告されていることから、それらの問題点を考慮し、股関節周囲筋筋力と非接触型ACL損傷に関する研究を行うことにより、新たな知見が発見されるかもしれません。