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【Season2 vol.7】Active Learningを含むマルチモーダル学習モデルを用いた際の教育効果の検証

2021.10.20 | 著者:
アスリートへの教育はアスレティックトレーナーが果たすべき重要な役割の一つですが、理解を促すための教育手法について悩む場面も多いかと思います。今回は、学生アスリートを対象とした脳振盪教育に、Active Learningを含むマルチモーダル学習モデルを用いた際の教育効果を検証した論文を紹介いたします。

目的
学生アスリートを対象とした脳振盪教育後の知識の向上と定着に対するマルチモーダル学習モデル(パワーポイントによる講義・ビデオ映像の視聴・Active Learningでのリフレクション)の介入効果を評価することである。


方法
学生アスリートに対してRosenbaum Concussion Knowledge Index (RoCKI)調査(脳振盪の理解度を評価するテスト)を、マルチモーダル学習の介入前、介入直後、介入後3ヶ月後に実施し、脳振盪の知識および定着率を経時的に比較した。また、半構造化インタビューでは、内容分析を用いて、学生アスリートが(1)マルチモーダル学習モデルの介入と、(2)(自身の)知識の向上に関する認識について調査をした。


結果
最終的に13チーム、57人の選手が分析対象となった。介入による脳振盪の知識や定着度について有意な変化は確認されなかった。57 人のうち10人を対象として実施された半構造化インタビューから、 (1)高校時代に脳振盪教育を受けたという認識はない。(2)知識が向上したと感じた、(3)マルチモーダルモデルの介入が成功したと認識していた、(4)介入によって回答者が(自身が経験した脳振盪の)症状を思い出すことができた、という4つの内容が明らかとなった。


結論
マルチモーダルモデルによる教育介入は,学生アスリートにおける脳振盪の知識レベルを有意に向上させなかった。しかし、質的分析の結果から、学生アスリートはマルチモーダルなアプローチを好んでおり、すべての回答者が介入後に脳振盪の知識が増えたと感じていた。今後の研究では、学生の脳震盪の知識を高めるためのActive Learningを含めたマルチモーダルなアプローチを検討する必要がある。

アスリートが脳振盪に関する知識の向上させることは、脳振盪予防・マネジメントの観点から重要度が高いことに疑いはありません。本研究の結果からは、マルチモーダルモデルによる介入が最も教育効果が高いという仮説は立証できませんでした。しかし、少なくとも学生アスリートが介入について満足していたこと、自身の理解度が高まったと認識していたことから、アスレティックトレーナーが、アスリートへの脳振盪教育においてActive Learningを含むマルチモーダルモデルを用いることは、より良い選択であるように考えられます。

出典
Scott LC, Langdon J, Botnaru D, Hunt TN. Evaluating knowledge attainment and retention of a multimodal approach to concussion education in collegiate athletes. Athl Train Educ J. 2021;16(3):198–207.

文責
越田専太郎