COLUMN運営コラム
【Season2 vol.10】女性初心者ランナーに対する膝関節傷害に関連する運動学の評価としてのランニング・レディネス・スケール
2021.12.20 | 著者:
ランニングを楽しむ方々が最も悩まされる傷害は、膝関節傷害と報告されております。そして、その傷害の危険因子は、股関節内転、膝関節内旋運動であると言われております。三次元動作解析装置を用いた測定により、それらの関節運動を評価することは可能となりましたが、スポーツ現場でその測定を行うことは容易ではありません。その一方、ランニング・スキルの評価に特化した簡易的な評価方法である「ランニング・レディネス・スケール(以下、RRS)」が存在します。本論文では、股関節と膝関節運動の評価としてのRRSの信頼性と妥当性について検討しています。
目的
RRSの検者内・検者間信頼性の確認と、膝関節傷害に関連するランニング時の運動学との関係性を通じ、女性初心者ランナーに対するRRSの妥当性について検討すること。
方法
16歳から60歳の健康な56名の女性初心者ランナーが本研究に参加し、三次元動作解析装置を用いて、ランニング中の股関節内転、膝関節外転、膝関節内旋、遊脚側の骨盤の下降の関節角度を測定した。その後、RRSの両脚ホッピング、浅いシングル・レッグ・スクワット、ステップ・アップ中の股関節内転、膝関節外転、膝関節内旋、遊脚側の骨盤の下降の関節角度を測定した。RRSは、5つのテストを実施し、最大5点満点でランナーの下肢・体幹の筋力、下肢関節運動を採点する評価方法である。点数が高いほどテスト結果が良いことを示している。RRSの詳細は表1に示す。RRSの信頼性は、フライスのカッパ係数を用いて算出した(5名の評価者が3回評価)。RRSの妥当性を評価するため、ランニング中と両脚ホッピング中、浅いシングル・レッグ・スクワット中、ステップ・アップ中の各関節運動との相関関係をピアソンの相関係数を用いて算出した。
結果
RRSの検者内信頼係数は、0.87から1.00であり、検者間信頼性係数は、0.58から1.00であった。ランニング中の各関節運動とRRSの両脚ホッピング、浅いシングル・レッグ・スクワット、ステップ・アップ中の各関節運動との相関係数は、0.537から0.939であったが、膝関節内旋運動においては有意な相関関係は認められなかった。また、RRSの点数が高い女性初心者ランナーは、ランニング中の膝関節外転角度が有意に小さいことが明らかになった。
結論
女性初心者ランナーの膝関節外転角度評価において、RRSは有益な評価方法であるが、骨盤や水平面の膝関節運動を効果的に評価するためには、RRSの評価基準や評価内容を検討する必要がある。
ランニング中の膝関節外転角度の増加は、膝関節に大きな負荷を与えると言われております。本論文により、1)ランニング中の膝関節外転角度と両脚ホッピング(r = 0.939)、浅いシングル・レッグ・スクワット(r = 0.858)、ステップ・アップ(r = 0.825)中の膝関節外転角度との間に高い相関関係があること、2)RRSの点数が高いランナーは小さい膝関節外転角度を示すことが明らかになりました。すなわち、アスレティック・トレーナがRRSを用いて女性初心者ランナーの膝関節運動を評価することにより、安全にランニングを楽しみたいという彼女たちの希望を叶えることに我々は貢献できるのではないでしょうか。改善が必要な評価方法であることも論文内で提示しておりますが、RRSは良い信頼性と妥当性を持つ評価方法であることから、現場で活用できる有益な評価方法であると考えられます。
出典
Harrison K, Williams Ⅲ DSB, Darter BJ, et al. Running Readiness Scale as an assessment of kinematics related to knee injury in female novice runners. J Athl Train. 2021. Online ahead of print.
文責
鈴木 秀知
目的
RRSの検者内・検者間信頼性の確認と、膝関節傷害に関連するランニング時の運動学との関係性を通じ、女性初心者ランナーに対するRRSの妥当性について検討すること。
方法
16歳から60歳の健康な56名の女性初心者ランナーが本研究に参加し、三次元動作解析装置を用いて、ランニング中の股関節内転、膝関節外転、膝関節内旋、遊脚側の骨盤の下降の関節角度を測定した。その後、RRSの両脚ホッピング、浅いシングル・レッグ・スクワット、ステップ・アップ中の股関節内転、膝関節外転、膝関節内旋、遊脚側の骨盤の下降の関節角度を測定した。RRSは、5つのテストを実施し、最大5点満点でランナーの下肢・体幹の筋力、下肢関節運動を採点する評価方法である。点数が高いほどテスト結果が良いことを示している。RRSの詳細は表1に示す。RRSの信頼性は、フライスのカッパ係数を用いて算出した(5名の評価者が3回評価)。RRSの妥当性を評価するため、ランニング中と両脚ホッピング中、浅いシングル・レッグ・スクワット中、ステップ・アップ中の各関節運動との相関関係をピアソンの相関係数を用いて算出した。
結果
RRSの検者内信頼係数は、0.87から1.00であり、検者間信頼性係数は、0.58から1.00であった。ランニング中の各関節運動とRRSの両脚ホッピング、浅いシングル・レッグ・スクワット、ステップ・アップ中の各関節運動との相関係数は、0.537から0.939であったが、膝関節内旋運動においては有意な相関関係は認められなかった。また、RRSの点数が高い女性初心者ランナーは、ランニング中の膝関節外転角度が有意に小さいことが明らかになった。
結論
女性初心者ランナーの膝関節外転角度評価において、RRSは有益な評価方法であるが、骨盤や水平面の膝関節運動を効果的に評価するためには、RRSの評価基準や評価内容を検討する必要がある。
ランニング中の膝関節外転角度の増加は、膝関節に大きな負荷を与えると言われております。本論文により、1)ランニング中の膝関節外転角度と両脚ホッピング(r = 0.939)、浅いシングル・レッグ・スクワット(r = 0.858)、ステップ・アップ(r = 0.825)中の膝関節外転角度との間に高い相関関係があること、2)RRSの点数が高いランナーは小さい膝関節外転角度を示すことが明らかになりました。すなわち、アスレティック・トレーナがRRSを用いて女性初心者ランナーの膝関節運動を評価することにより、安全にランニングを楽しみたいという彼女たちの希望を叶えることに我々は貢献できるのではないでしょうか。改善が必要な評価方法であることも論文内で提示しておりますが、RRSは良い信頼性と妥当性を持つ評価方法であることから、現場で活用できる有益な評価方法であると考えられます。
出典
Harrison K, Williams Ⅲ DSB, Darter BJ, et al. Running Readiness Scale as an assessment of kinematics related to knee injury in female novice runners. J Athl Train. 2021. Online ahead of print.
文責
鈴木 秀知