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脳振盪後の前庭リハビリテーションの有効性:無作為化比較試験のシステマティックレビュー

2023.02.24 | 著者:


 
序文:

脳振盪から競技へ復帰するためには、段階的なステップを経て徐々に運動強度を上げていく必要がありますが、眩暈や平衡感覚の乱れなどの前庭機能障害関連の症状により、復帰へのプロセスが思うように進まないことがあります。本論文は、そうした脳振盪後の前庭機能障害に対するリハビリテーションの有効性を検証しています。

 

背景・目的:

軽度外傷性脳損傷(Mild Traumatic Brain Injury: 以下mTBIと表記)は、人口10万人あたり約740人が罹患している。mTBIに関連する障害としては、眩暈、立ちくらみ、平衡感覚、歩行障害、複視、視界のぼやけなどがある。これらの症状の急性期もしくは慢性期に対する前庭リハビリテーション(vestibular rehabilitation: VR)の効果やDosage (持続時間・頻度・強度)については、明確にされていない。これらの点を明らかにするために、無作為化対照試験(Randomized controlled trial: RCT)のシステマティックレビューを行った。

 
方法:

PubMed、CINAHL、Cochrane Trial SPORTDiscus、Web of Science、PEDROで2015年から2022年にかけて系統的な文献検索を行った。適格基準を満たす文献は、VRを考慮し、参加者がmTBIを罹患しており、性別・年齢制限のないRCTとした。盲検化された2名の査読者が独立して研究を選択し、意見の相違がある場合は第3の著者に連絡を取った。バイアスのリスクは、2人の著者が独立してスクリーニングし、他の2人の著者が連続してチェックした。

 

 
結果:

33編の論文を審査した結果、7編が採用基準に合致した。眩暈が日常生活に与える影響を測定するDizziness Handicap Inventory(DHI)1では、統計的な差とVRに有利な平均差-6.91(-9.11、-4.72)認められ、VRが症状を軽減することが示された。脳損傷後の生活の質を評価するQuality of Life after Brain Injury(QOLIBRI)2においても、VR群の方が高得点を獲得し、VRにより生活の質が向上することが示された。バランスと自覚症状のアンケートについては、賛否両論の結果であった。High-level Mobility Assessment Tool for traumatic brain injury(HiMAT)3ではVR側に統計的に有意な差が認められ、短期間で症状を改善することを示した。急性期患者を対象とした二つの論文は、VRが競技復帰までの時間を短縮するのに有効であることを示した。また別の二つの論文では、VRが急性期の歩行障害を軽減できることを示した。

 
結論:

VRは脳振盪患者の症状軽減に有用と思われるが、研究内容や使用したアウトカムに大きなばらつきが見られた。したがって、VRの有効性を評価するためには、より大規模なサンプルによる研究が必要である。

 

まとめ:

本論文では、VRは脳振盪後の眩暈の軽減、生活の質と歩行障害の改善、競技復帰への時間を短縮するために有効であることが示されています。休養と運動強度の調整を中心にした従来通りの段階的な競技復帰への方法に加え、以前のアカデミックアップデートでも紹介されたVOMSなどによる眼球運動と前庭機能の評価(AU#4)と神経筋トレーニング(AU#12)、そして今回の論文で紹介されたVRによる前庭機能障害に対するリハビリテーションを行うことで、脳振盪からのより安全かつ早期の復帰が可能となるかもしれません。

 

 

Reference (PROM)

 

  1. Zamyslowska-Szmytke E, Politanski P, Jozefowicz-Korczynska M. Dizziness Handicap Inventory in Clinical Evaluation of Dizzy Patients. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(5):2210. Published 2021 Feb 24. doi:10.3390/ijerph18052210


 

  1. Tyner CE, Kisala PA, Boulton AJ, et al. Responsiveness of the Traumatic Brain Injury Quality of Life Cognition Banks in Recent Brain Injury. Front Hum Neurosci. 2022;16:763311. Published 2022 Mar 4. doi:10.3389/fnhum.2022.763311


 

  1. Kleffelgaard I, Roe C, Sandvik L, Hellstrom T, Soberg HL. Measurement properties of the high-level mobility assessment tool for mild traumatic brain injury. Phys Ther. 2013;93(7):900-910. doi:10.2522/ptj.20120381


 

Reference

Galeno E, Pullano E, Mourad F, Galeoto G, Frontani F. Effectiveness of Vestibular Rehabilitation after Concussion: A Systematic Review of Randomised Controlled Trial. Healthcare (Basel). 2022;11(1):90. Published 2022 Dec 28. doi:10.3390/healthcare11010090

 

筆頭著者:高萩真弘、

編集者:井出智広、姜洋美 岸本康平、柴田大輔、杉本健剛、高田ジェイソン浩平、水本健太(五十音順)